ほげーむわーく

宿題をゲームのように楽しむブログ

罰ゲームによって学生生活が狂わさせた話

今週のお題「人生最大の危機」

なぜこのタイミングで人生最大の危機がお題なんだろう。
最近で言えば夏休みやアイスクリームがお題だったはず。季節的な、時事的なことがお題に選ばれていたと思う。
そこへきてピンチがお題。何で??


8月中旬は季節的にピンチなシーズンなんだろうか。今週一週間は毎年ピンチに苛まれる決まりなんだろうか。
そういえば今週は台風が日本に遊びに来ていたな。うちも会社がお盆休みなので色々計画してたんだけれども、台風の日本縦断ツアーと被ってしまって断念。
休みのうちに体重を10㎏落とし、資格の勉強をしながらブログ記事を10個書くという計画が台風のせいでできなくなってしまった。
外出もできないじゃないか。たまに雨が降ったかと思えばすぐに晴れおって。雨だと思ったから家でぐーたらしてしまうではないか。Amazonビデオでアニメめっちゃ見たわ。東京喰種面白いじゃねえか。一気見したわ。
これも全部台風が悪い。



今まさにピンチ。



というのも夏休みに入る前、私は会社の同僚に夏休みの過ごし方を熱弁していた。
「お前らせっかくの夏休みに何もしないなんてことはないよな。この前ボーナスも入っただろ?お金は使わないとダメなんだぜ。何もしないでゆっくりするとかあり得ん。一流の人間はお金と時間の使い方が一流だから一流なんだ。」


一流なんだ。


あれだけ豪語おきながら、この状況はかなりマズイ。
きっと夏休みが終わった後に聞かれる。
お前はどんな夏休みだったかと。
断言してもいいけど東京喰種を一気見しましたは一流の人間の過ごし方ではないだろう。
この状況を回避するにはどうしたらいいか。


そうだ、転職だ。夏休みの過ごし方を答えなければならないという精神的苦痛を理由に転職してしまおう。
同僚たちよ恐れおののけ。お前たちが神戸や石垣島に行ってる間に私は転職してしまうぞ。これが一流の時間の過ごし方なのだ。


何の話??


ああ人生最大の危機の話だ。人生最大ってことだからこれまでのこと、過去に起こったピンチの記事を書かないといけない。今ピンチの話はどうでもいいんだ。

人生最大の危機ってなんだろうか。


そう言えば思い出した。人生最大の危機。
それは私が中学一年生だった頃。


当時流行っていたゲームがある。
通称指スマ
参加者全員が両手を出していっせーのっせ、で親指が上がる数を当てるゲーム。
負けたものは当然罰ゲーム。
初めはかわいいものだった。全員からのしっぺ、デコピン。

かわいいものだった。

しかしその罰ゲームはグレードを増していった。
しっぺ、デコピンはうまい棒へと進化した。

負けたものはうまい棒一本、全員に奢る。

これも次第にエスカレートし、うまい棒一本が二本になり十本になり、うまい棒のインフレが起こった。
毎日そんなことやってたらキリがないのでいつしかツケ、借金制度が導入された。
「今月はうまい棒を返済できないから来月まで待ってくれ」
「わかった。その代わり1本プラスな」
そうやって子供たちは世の中の金融の仕組みを学んでいった。
そんな中でもうまい棒借金が千本以上あるやつもいたりした。


あいつの人生は終わった。


中学生でうまい棒千本も借金するなんて。
多重債務者になってしまった者は今後の人生はお先真っ暗だろう。アーメン。


そんなうまい棒罰ゲームはさらなる高みへと進む。
好きな子への告白である。


この罰ゲームは熾烈を極めた。
当時中学生の自分たちはほぼ100パーセントの確率で恋愛初心者だ。
好きな子になかなか告白ができない。経験がないからだ。

この罰ゲームは必ず実行しなければならないという厳格なルールの元で行われる。
この恐ろしい罰ゲームが始まってからというもの、告白が成功した、玉砕したというニュースが学年中に広がることになる。
罰ゲームは必ず告白が行われたという証明のため、指スマ参加者全員が注目する中で実行される。
成功なら喜ばしいことだが、振られた場合は悲惨だ。なにせ全員の前で好きな子に振られるという醜態を晒すことになる。


あいつ振られやがったwww


そんな恐ろしい噂が一斉に広まってしまうのである。
しかもこの罰ゲームの恐ろしいところは好きな子でなくても告白させてしまうことである。
たとえ好きな子なんていないよと言ったところで、告白を回避できない。
そいつが‘好みであろう子を指定し告白させる。ルールは絶対なのだ。

この罰ゲームは流行った。
何せ全員が本気でゲームに挑むのである。
一瞬の油断も許されない。目は血走り脳内アドレナイン出まくり闇のゲームだ。
醜態を晒すわけにはいかない。全員必死だった。


そして悲劇は起こった。
私は闇のゲームに巻き込まれてしまうのである。
今までは休み時間に行われていたので、トイレ行ったり寝たふりをすることで回避できた。
しかし忘れもしない4限目の音楽の時間、ある曲の楽譜を写生するという実質自習の時間。
当然写生など一瞬で終わってしまうので生徒たちは暇を持て余した。
そして始まった。
「指スマしようよ」


この提案を回避することはできなかった。教室という密室で私に逃げ場はなかった。
それでも参加者は十数名、負ける確率は10パーセント以下。負ける確率は低い。大丈夫だ。
そしてあっという間に半分ほど勝ち逃げした。大丈夫だ、まだ慌てる時間ではない。そう自分に言い聞かせた。
しかし最後の二人にまで残ってしまった。大丈夫だ、まだあわ、あわ、あわわわわ!!!!

あのときは人生至上最大の鼓動を感じた。いやだ、負けたくない。
しかし人生とは無常なものでその時は訪れた。
全身から力が抜けるのを感じた。


私は泣いた。


友人たちはニヤニヤ薄ら笑いを浮かべながら、「で、どの子に告白する?ww」
同情の気持ちなど全くなかった。それでも人間か。
私は好きな子はいないと言うと、
「じゃああみだクジで決めよう」という全然ありがたくないありがたい提案を受けた。


そして一人の子に決まった。
では告白の方法はどうするか。
しかし私があまりにも茫然自失だったので直接言うのはむごいだろうという結論になった。
そして取られた代案が愛のポエムを渡すというもの。


イケイケの男子生徒がラブレターを作成した。友人たちは盛り上がっていたが、私はその様子を眺めているしかできなかった。
実際何が書かれていたかは不明だ。しかしそれを読んだ友人たちは腹を抱えてゲラゲラ笑い転げていた。
一体何を書いたんだ。

そのラブレターをその子の机の引き出しに閉まい、罰ゲームは完了となった。



それから数日。私は気力を失っていた。
あれ以来その子には会話どころか顔を合わすのもできなくなっていた。
あんな恥ずかしいポエムを送ってしまった羞恥心もそうだが、何より罰ゲームに選ばれてしまった子に申し訳ないと思った。
自分の知らないところで告白の対象になってしまっている、それもあみだクジで。こんな失礼な話はないだろう。



このままじゃだめだ


私は立ち上がった。
放課後、教室を飛び出し途中何度も転びながら、あの子が部活をやっている体育館へ走った。

雨が降り出した。


傷だらけ、泥だらけになりながら体育館の扉を開いた。
部活中のその子を呼び出し、直接伝えた。


「急にごめん。あの時のあの手紙のことなんだけど。」
「罰ゲームなんだ。ほんとにごめん。こんな形で君を巻き込んでしまって申し訳ない。」
「だからどうか気にしないで。色々悩ませてしまってごめん」


そう言うと私は体育館を飛び出した。


雨は止んでいた。



空には虹がかかっていた